弁護士はどう読む?―『空飛ぶタイヤ』に見る刑事事件考

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過失犯とは

過失犯は、故意犯の対になるものですが、ここでいう過失について学説上、争いがあります。

まず、「旧過失論」です。この学説は、刑事事件における「過失」について「故意犯における責任要件として故意を理解するのに対応して、過失を過失犯における責任要件」と理解します。この考えによれば、過失とは、構成要件該当事実の認識・予見可能性があったことに対する怠慢を意味することになります。これに対し、予見可能性は程度概念であるから、これによって過失犯の処罰範囲を十分に画することはできないとの批判し、「一定の基準行為を遵守したか」という客観的基準によって過失の成立範囲を定め、違法性の観点からも検討すべきとする学説もあります。これは「新過失論」と呼ばれます。まとめると、旧過失論は、法益侵害の惹起を過失犯の構成要件該当事実と考える「結果無価値的見解」であるのに対し、新過失論は、法益侵害の惹起に加え、基準行為からの逸脱を過失犯の構成要件要素として要求するもので、「行為無価値的見解」であるといえます。なお、その他の見解として、結果の予見可能性を不要とし、何が起きるかわからないという単なる「危惧感」を解消する措置をとらないことをもって過失を認定するという危惧感説という見解も存在します。

実務的には、注意義務違反、つまり結果予見義務と結果回避義務に違反した場合に過失犯が成立すると考えられています。

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