弁護士はどう読む?―『空飛ぶタイヤ』に見る刑事事件考

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信頼の原則

予見可能性をどの程度のものに限定するかということと絡んで重要となるのが、「信頼の原則」です。 信頼の原則とは、被害者又は第三者が不適切な行動にでないことを信頼するに足る事情がある場合、逆にいえば、適切な行動にでることをすれば足り、その信頼が裏切られた結果として法益侵害が発生したとしても、過失責任が問われることはないとする原則をいいます。

例えば、自動車がエンジン停止した後、再度発車した際に別の車両に衝突し同車の運転手に怪我を負わせた事案において、判例(最判昭和41・12・20)は、「自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、右側方からくる他の車両が交通法規を守り自車との衝突を回避するため適切な行動に出ることを信頼して運転すれば足りるのであって、本件Aの車両のように、あえて交通法規に違反し、自車の前面を突破しようとする車両のありうることまでも予想して右側方に対する安全を確認し、もって事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務はない」と判断しています。

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